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テレビゲームあれこれ日記

PS2用ソフト『龍が如く』の話 完結編

 前項に引き続き、プレイステーション2(PS2)用ソフト『龍が如く』に関するお話を。
 敵キャラクターであるヤクザとの戦闘は、荒削りではあってもおおむね好感触。アクション・ゲームには欠かせない攻撃時の爽快感や、上達していく楽しみもちゃんと用意されています。

 シナリオ面でも、キャラクターのネーミングやセリフ回しなどに一定の抑制が効いていて、作り手がはしゃいでいない。作り手のこの落ち着きは非常に貴重だと思いましたね。「そんなの小説や映画では当たり前じゃん」と言われてしまいそうですが、ゲームの世界のシナリオというのは、まだまだその程度のことが珍しがられてしまう段階にあると思います。

 もちろん、全てのゲーム・シナリオが立派な文学作品になる必要はないわけですが、しかしゲームも“ストーリー”を扱い得る媒体である以上、せめて、例えば『水戸黄門』とか『はぐれ刑事』のような黄金の作劇ノウハウと、誰もが話題にしやすい一般性とを兼ね備えたプロフェッショナルなシナリオが、もうちょっと安定的に供給されるようになってくれればイイのになあ、と(贅沢すぎる?)。

 ところで本作の舞台は現在の日本であります。
 夜の新宿・歌舞伎町を模したリアルな3D画面の中を自由に歩き回れる、というのはなかなかに新鮮。でもでも、その中でやらされることというのは、ぶっちゃけ普通のゲームと何も変わらんのだよな。チンピラを倒してお金と経験値を稼ぎ、体力回復アイテム(ドリンク剤)を買ってイベントに挑む――。ゲームとしては、よくある3Dアクション・アドベンチャーのスタイルを踏襲しています。

 で、問題はこのありふれた3Dゲームの形と、そして本作の“売り”であるところの、現代日本を舞台とした“シリアスな人間ドラマ”の世界観との相性が、ムチャクチャよろしくない、という事実にあります。
 そもそもアクション・ゲームの舞台に現在の日本を選んだ時点で、敵キャラクターの設定が急激にウソくさくなってしまう。まさか一般の通行人を殺して回るわけにはいかないし、敵にするならやっぱりヤクザか怪獣くらいしかない(笑)。
 
 しかしそうなると今度は、鉄砲玉ヤクザ同士の大立ち回りに今日日どれほどのリアリティーがあるのか? という問題にもなってきます(逆に、リアルならそれでいいのか? という疑問も成立するだろうし。これは難しいですよ)。
『たけしの挑戦状』みたいな荒唐無稽なゲームならともかく、アクション・ゲームでシリアスなドラマを表現するのに、現代の日本というのは素材としてあまりにもハードルが高いのでは? と思います。
 体力を回復するためにドリンク剤をグビグビと飲み続けるヤクザの図なんて、ストーリーがまじめであればあるほど浮いちゃうもんなあ……。そういうのを込みで楽しめる大人なら、ゲームとしては問題なく遊べる内容なんですけどね。ただしディスクの読み込みが多いので、その辺はご注意下さい。

by atom211974-3 | 2006-11-02 23:06
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