人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テレビゲームあれこれ日記

翳(かざ)す日々

 翳(かざ)す――!

 こんな詩的(?)な言葉、僕が子供の頃は『ドラクエ』などロールプレイング・ゲームの中でしか見かけませんでした。「魔法の杖をふりかざした!」とかね。
 あと、活字のメディアで「権力を振り翳す」なんていうのは、今も昔も普通に使いますよね。

 ところが今日では、買い物に行けばICチップを用いた電子マネーの類を「かざしてください」と言われるし、駅のトイレの手洗い場に行けば「手をかざしてください」と言われる。

 しょうがないのでカードを翳したり手のひらを翳したり、間違えて病院の診察券を翳して取り乱したり、右手を翳したり左手を翳したりして、我々ゲンダイ人は日々何かを翳すようになりました。

 昔はわりと抽象的なことに使われていた言葉が、いまでは日常的な動作を示すようになったんですよね。

 まあ、今さら言うのも何だけど、よくよく考えてみれば手のひらを翳すだけで必ず水が出るなんで、まるで魔法みたいじゃないですか。

 たまに、旧式(バルブをひねって水を出す方式)の手洗い場で手を差し出して、いつまで経っても水が出てこないことに憮然としたりしますけど(笑)、その時点でもう、水が出ることの有り難さは忘れていたりします。

 ここでSF作家の故・アーサー・C・クラークが言った有名な言葉「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」が思い出されます。

『ドラゴンクエスト』世代の僕は、“魔法”と言えば『ドラクエ』の“フバーハ”や『FF』の“バオル”です(何でだ)。ゲームの中での“魔法”はとても強力です。素手ではとても勝てないようなモンスターを、一発で退散させたりできますからね。

 そういうロールプレイング・ゲーム的な意味では、JRのICカード“Suica”なども“魔法”と見分けがつかない。

「やばい、もうすぐ切れるよ。チャージしなくちゃ」って、これ完全にゲームの中の“魔法”の話みたいじゃないですか。

 リアルなものがどんどん電子化されて、「ゲーム」的に、「アイテム」的に処理されるようになっているんですよね。そうすると人間の行動も、ちょっとだけ魔法使いっぽくなるのが面白い。

by atom211974-3 | 2009-08-28 01:21
<< 隣はゲームをする人ぞ 『ああ無... やめられない終わらない『ドラク... >>